TENET
コロナ禍のあいだに、最も繰り返し観た映画
クリストファー・ノーランの作品の中でも、難解さの極み
一度観ただけでは理解できない
なので何回も観た
この映画でいちばん心を掴まれたのは、主人公を未来から救いにやってくるニールという存在
ニールの行動は派手な正義感から来ているようには見えない
おそらく自分の母親を助けてくれた主人公への感謝と世界が滅ぶのを防ぐという使命感
その二つが重なった結果だと思う
テネットは、いわゆる瞬間移動のタイムスリップものではない
時間を「逆行して生きる」世界
もし20年戻りたければ、20年分、逆向きの時間を生きなければならない
近道はない
ショートカットもない
全部、時間で払うしかない
その覚悟と執念に強く心を打たれた
要約や早送りで映画を楽しむ現代
タイパやコスパが重視されるのも自然な流れ
しかしテネットは違う
一度では分からないし、説明も親切ではない
気を抜くとすぐに置いていかれる
何度も向き合わないと見えてこない仕掛けが埋め込まれている
これはノーランなりの現代の映画への向き合い方のアンチテーゼだと思う
時間をかけないと届かないものがある
繰り返さないと見えないものがある
テネットは、その前提で作られている作品
この映画から学んだのは、成果を上げるのに、たやすい方法はない、ということ
もう一つ
ニールのような世界を左右する大きな使命でなくても、人はそれぞれ、人知れず自分なりの役割や信念を背負って生きている
今日すれ違った誰かも、平凡な生活を送っているように見えて、
何かを目指し、何かを守りながら生きている
そう思うようになった
テネットは難しい映画だと思う
しかし何度も観てしまった理由は、仕掛けだけでは無い
時間をかけて引き受けること、
そして、誰も気づかなくてもそれぞれが自分の場所で何かを背負っているという感覚
その視点に気づかされた


