年に一度は観たくなる映画がある
日本映画の金字塔だと思う
テレビドラマ化も何度かされているが、
やはり映画とは別物だ
特に和賀を加藤剛が演じた1974年版が
自分にとってのオリジナル砂の器だ
幼少の頃に観た時と、
歳を重ねて観るのとでは
心に響く場面が変わる
初めて観たのは小学生だった
当然、物語の深いところは分からない
今観ると
胸に刺さるシーンがいくつもある
刑事を演じる
丹波哲郎
捜査報告を読み上げながら
思わず涙を流す場面がある
あの時代は
罪を犯す人にも
同情される理由がある場合が多かった
そんな空気が
まだ社会のどこかに残っていたのだと思う
そして忘れられないのが
和賀の父親の場面だ
刑事が訪ねて行き
和賀の写真を見せる
その時、父親が放つ言葉
「そんな人、知らねぇ」
演じているのは
加藤嘉
あの一言に
すべてが詰まっている
終盤の
放浪の回想シーンも印象的だ
原作では数ページの描写だが、
映画では長い尺を使って描かれる
父と子の放浪
悲しい旅ではあるが、
同時に
父と子が心を通わせた
かけがえのない時間でもあったのだと思う
この映画を語るうえで
もう一つ欠かせないのが
テーマ曲の 「宿命」 だ
作曲は
菅野光亮
クラシックとして特別に凝った曲ではないのかもしれない
でも日本人の情緒に強く訴えかける旋律だと思う
あの旋律が流れると
映画の情景が一気によみがえる
私も父とは
あまり会話がなかった
ただ、釣りに行く時だけは
長い時間を一緒に過ごした
前の晩から車で出かける
父が釣りをしている間
私は河原で一人で遊んでいる
ほとんど会話はない
でも
嫌いな時間ではなかった
その後、
父に約束を破られたことがあり、
会話はほとんど無くなった
大人になって考えると
父にも色々事情があったのだろう
でも
あの釣りの行き帰りの道中の時間は
自分にとって大切な記憶だった
映画のラスト、
和賀がピアノを演奏する
神がかった演奏だ
あの時
彼の頭の中には
父との放浪の時間が
よみがえっていた
映画ほどドラマチックでは無くても
人はそれぞれの宿命を背負って
生きているのだと思う

