テレビ版の『探偵物語』が好きだった
細身のスーツ
シルクハット
ベスパ
低層の雑居ビルにある探偵事務所
そして機能していない美人秘書?笑
あのドラマには、ストーリー以上に様式美があった
思わず真似したくなる
現実離れしているのに妙にリアルで、気取り切っているのに嫌味ではない
あれはひとつの美学だったと思う
ショーケンや『傷だらけの天使』を意識し、影響を受けていたのは明らかだ
都会の匂い、場末、アウトサイダー感、反骨、コミカル
ショーケンは、優作が自分を意識して追いかけてきたという趣旨のことを語っていたが、松田優作本人からは、そういう言い方をあまり聞いた記憶がない
そのへんもまた、優作らしい
影響は受けても、最後はちゃんと自分のものにしてしまう
ただ、決定的に違うところがある
優作の探偵にはバディがいない
そこがいい
誰かとの関係性で魅せるのではなく、孤独に街にたたずむ
工藤俊作は、まさにロンリーマンだった
エンディング曲「Lonely Man」
あれ以上に工藤俊作を言い当てた言葉もない
洒落ていて、どこか寂しくて、
あの孤独がたまらなく魅力的だった
好きな回は第5話「夜汽車で来たあいつ」
ゲストは水谷豊
『傷だらけの天使』のアキラそのままのキャラ
やっぱりショーケンの背中を優作が追っていたんだろうなと思う
工藤俊作は、ただ格好いいだけの男ではない
はみ出し者には優しい
弱い者の側に立てる
それは善人ぶった優しさではなく、自分自身もまた社会の外縁に立つ人間だからこその優しさ
その一方で、相手が巨悪になると狂気をむき出しにして暴れる
抑え込んでいた怒りが一気に噴き出す感じだ
優しさと危うさ、その両方を持っているから、本当に魅力的なキャラだった
そして最終回「ダウンタウン・ブルース」も忘れがたい
ここでは、いつものようなコミカルな工藤ちゃんではない
軽口の奥にあった狂気が、最後はむき出しになる
ラストに流れるダウンタウンブギウギバンドの「身も心も」がまたいい
あれを聴くと、工藤俊作はただ洒落た探偵だったのではなく、街の片隅で孤独を抱えたロンリーマンだったのだとあらためて思う
工藤探偵事務所の雰囲気に今のオフィスは影響を受けている
権威に媚びず、はみ出し者に優しく、理不尽には黙らない
孤独でも自分の流儀を貫く
そういう生き方に惹かれてきた
自分にとって工藤俊作は、単なるドラマの主人公ではなく、生き方のひとつの理想だったのだと思う

