『ランブル 音楽界を揺るがしたインディアンたち』
知られざるネイティブ・アメリカンの音楽史を扱ったドキュメンタリーである
これは面白かった
知的興奮がかなり高まった
ブルースも、カントリーも、ロックも、アメリカで生まれた多くの音楽が、ネイティブ・アメリカンの影響なしには語れないかもしれない
そんな見方を突きつけられたからだ
アメリカ音楽の源流というと、まず黒人音楽の影響が語られる
それはもちろん間違いではない
しかし、本作はそこにもう一つ、大きな流れがあったことを示していく
しかも、その流れは長いあいだ、正当に語られてこなかった
象徴的なのが、リンク・レイの「ランブル」である
1958年に発表されたインスト曲
歌詞もないのに、“少年犯罪を助長する”という理由で放送禁止になった
そんな話だけでも十分にすごいが、さらに驚くのは、その攻撃的で不穏なギターサウンドが、その後のロックに与えた影響の大きさである
パンクも、メタルも、この一曲なしには違うものになっていたかもしれない
大げさではなく、そんなふうに思わせるだけの迫力がある
ロックやブルースのルーツを黒人音楽まで辿る話はよく聞く
だが、そのさらに奥に、ネイティブ・アメリカンの文化やリズム感、スピリットが織り込まれていたかもしれない、という見方にはかなり興奮した
こちらが知っているつもりでいたアメリカ音楽史は、だいぶ片手落ちだったのかもしれない
この作品は音楽映画であると同時に、アメリカの暗部を照らす映画でもある
ネイティブ・アメリカンをルーツに持つミュージシャンたちが、なぜ自らの出自を公にしなかったのか
それは誇りがなかったからではなく、差別があまりに深かったからである
ロビー・ロバートソンをはじめ、多くの人がそのルーツを長く語らなかった背景には、黒人差別ともまた違う、根の深い抑圧の歴史があった
奪われ、追われ、消された側の文化が、それでも消えきらずにアメリカ音楽の中核に流れ込み、世界を魅了してきた
それは皮肉でもあり、救いでもある
すべてを奪われても、魂の一部は音の中に生き残る
本作を観ていると、そんなことを思わされた
恥ずかしながら、自分も知らないことだらけだった
洋楽やロックにまったく疎いつもりではなかったが、それでもまだこんなに知らない流れがあるのかと思った
知識として名前を知っていることと、その背後にある歴史や痛みを感じることは、まったく別の話である
英語が第一言語ではない以上、歌詞の細部まで本当に身体で受け取るのは難しい
意味を調べることはできても、最初から肌感覚でわかるわけではない
それでも、音楽には必ず背景がある
宗教音楽には宗教の背景があり、宮廷音楽には宮廷の背景があり、英雄を讃える音楽にはその時代の空気がある
ロックやブルースだって同じはずだ
ただノリがいいとか、格好いいとか、それだけでは済まない何かが流れている
もし、自分が気分よく聴いていた音楽の奥に、迫害や差別や喪失の歴史が深く刻まれていたとしたら
それを知ったからといって気軽に聴けなくなる必要はないが、少なくとも少しは敬意を持って聴くべきなのだろう
この映画は、そういう当たり前のことを思い出させる
『ランブル』は、アメリカ音楽の見えなかった地層を教えてくれる映画だった
そして同時に、自分がまだ何も知らないことも教えてくれた
こういう映画に出会うと、世界はまだまだ広いと思う
少し嬉しくなる
そして、ミュージシャンに対して軽率に侮辱的な発言をする某大統領などは、もっと歴史を学んだ方がいいとも思う
今週もお疲れ様でした。

