いわゆるハリウッドのアクション映画だと思って観ると、少し印象が違う
もちろん、デンゼル・ワシントン演じるロバート・マッコールは圧倒的に強い
悪人を制裁する場面も容赦がないが
必殺仕事人のように様式美がある
しかし、この映画の本当の良さは、そこではない
全体の構造は、往年のウエスタン映画に近い
流れ者の男が、ある町に辿り着く
そこには素朴で善良な人々が暮らしている
しかし、その町は悪党たちに支配され、住民たちはどこか怯えている
流れ者は最初、深く関わるつもりはない
だが、町の人たちと少しずつ関係を結び、その町を愛し始める
そして最後には、自分の力を使って町を守る
これは完全に西部劇のパターン
この映画が面白いのは、マッコールが最後に町を去らないところ
普通の西部劇なら、流れ者は役目を終えると去っていく
町のためとはいえ暴力を背負った男は、共同体の中には入れない
しかし、マッコールは違う
最後に、町の人々に迎え入れられる
この映画は、町を救う男の物語であると同時に、町に救われる男の物語でもある
シチリアの海沿いの町で過ごす時間が、とても良い
カフェ、石畳、海、教会、魚屋、顔なじみの人々
バイオレンスアクション映画のはずなのに、印象に残るのは、彼がカフェのテラスでティーを飲んでいる姿だったり、階段をゆっくり歩いている姿だったりする
老境に差しかかった男が、ようやく静かな場所を見つける物語なのだ
自分も茅ヶ崎に住んで、もう20年になる
大阪に次いで、人生で二番目に長く住んでいる町
オフィスは東京にある
しかし、日々、落としているお金は、茅ヶ崎の方が多い
ワンオペのイタリアン、駅前の町中華、レコードカフェ
日々の食材、消耗品
サウナ、マッサージ、ヘアサロン
歯医者、動物病院
気づけば、この町でずいぶん長い時間を過ごしてきた
自然とこの町に貢献したいと思うようになった
町から愛されるには、まず町を愛さないといけない
これは人間関係と同じだ
相手に求める前に、こちらが関心を持つ
こちらが敬意を払う
こちらが時間とお金と気持ちを使う
ただ、正直に言うと、人生の最後はマッコールと同じように、シチリアの海沿いの小さな町で迎えることにも憧れている
矛盾しているようだが、自分の中ではつながっている
大阪で生まれ育ち、東京で仕事をし、茅ヶ崎で暮らしてきた
そして最後に、どこか遠い海沿いの町で静かに暮らす
それは長い旅の終着点のようなもの
茅ヶ崎に惹かれたのも、結局は海のある町だったから
だから、シチリアの海沿いの町に憧れる気持ちも、茅ヶ崎を愛する気持ちも、たぶん同じ
少しでもその気分に近づきたくて、アルマーニ プリヴェのシチリアオレンジにインスパイアされたフレグランスを買おうかと
我ながら単純な人間だ
映画を観て、シチリアの海沿いの町に憧れ、今度は香りでその気分に浸ろうとしている
でも、そういう単純さも悪くない
劇中で流れるサシャ・ディステルの “La Belle Vie”
邦題は『麗しき人生』
若い頃に思い描く「麗しき人生」と、年齢を重ねてから思う「麗しき人生」は違う
海の見える小さな町で暮らす
朝、決まったカフェのテラスでコーヒーを飲む
顔なじみの人に挨拶をする
昼には少し歩き、夕方には海風にあたる
特別なことは何も起こらない
今日も穏やかに一日が終わる
そういう生活こそが、「麗しき人生」と思う

