近年になって、ようやく違法スカウト業者の摘発が進むようになった
さらに、そうした違法スカウトを利用していた風俗店などの摘発も相次いでいる
これは、良い流れだと思う
街で若い女性に声をかけ、言葉巧みに夜の仕事へ誘導する
最初は親切そうに近づき、相談に乗るふりをする
時には恋愛感情まで利用し、本人の判断力を奪っていく
これは、単なる夜の街の話ではない
若い人の孤独や不安、承認されたい気持ちにつけ込む、きわめて悪質な搾取の構造である
摘発が進むこと自体は、間違いなく前進だと思う
ただ、敵は手強い
ひとつの入口が塞がれると、すぐに別の入口を作ってくる
最近では、スカウト業者を使いにくくなったことで、風俗店や夜の仕事の店が、SNSを使って直接求人をPRするケースも目立つようになっている
おそらく、かつてスカウトの現場にいた人間や、その周辺にいた人間が、今度はSNS運用や求人広告の形で入り込んでいるのだろう
もともと、まともな求人媒体には掲載NG仕事だった
であれば、SNSに流れていくのは自然な流れでもある
問題は、それが若い人のスマホの中に、何気なく入り込んでくることだ
「高収入」
「自由な働き方」
「未経験歓迎」
「人生を変えたい人へ」
そんな前向きな言葉で装いながら、実態が見えにくい求人が流れてくる
風俗求人だけではない
違法リフォーム会社、何を売るのか分からない営業会社、実態の不明な高収入ビジネス
煽るような求人広告でSNSは溢れている
若い人の不安や焦りに入り込むビジネスは、形を変えて残り続ける
だからこそ、厚生労働省も警察と連携し、SNS上の求人についても、もう一段踏み込んだ規制や監視が必要なのではないかと思う
街頭スカウトだけを取り締まっても、スマホの中に入口が残っていれば、問題は終わらない
2019年5月16日
朝日新聞の朝刊に、当社の新入社員研修の記事が掲載された

人材派遣会社が、ポジティブな内容で朝日新聞に取り上げられるのは稀なこと
記事のテーマは、新入社員をどう守るか、だった
当時、当社の新入社員研修では、AV出演の強要、性風俗やナイトワークへの誘導、そしてスカウト会社による若い女性への巧妙な勧誘から、どう身を守るかを取り上げた
講師を務めてくださったのは、NPO法人ライトハウスの藤原志帆子代表(当時)
性暴力被害者支援のエキスパートである
性産業での労働強要は、単なる自己責任の話ではない
構造としての搾取であり、性暴力にあたる
その現実を、新入社員にきちんと伝えておきたかった
地方から上京してきたばかりの若い女性
まだ東京の街にも慣れていない
仕事にも慣れていない
人間関係もこれから作っていく段階
そういう子たちに、夜の街で声をかける人間がいる
親切そうに近づいてくる人間がいる
相談に乗るふりをする人間がいる
頭では危ないと分かっていても、ついて行ってしまうことがある
周囲から見れば明らかに危険でも、本人にはそれが救いに見えてしまうことがある
だから、知識が必要だった
もちろん、この研修を企画した意図には、会社として現場社員の定着率向上、離職防止、トラブルの未然防止という目的があった
人材ビジネスをしている以上、当然の話
しかし、もっと根源的な理由は
新卒社員を親御さんから預かる会社のトップとして
自分自身も人の親として
そして、ひとりの大人として
「絶対に足を踏み入れてはいけない領域がある」
「一度入ってしまうと、自分の意思だけでは抜け出しにくくなる場所がある」
そのことを、まだ何も起きていない段階で伝えておきたかった
若い人は、無知で引っかかることがある
でも、無知だけではない
寂しさや孤独
誰かに必要とされたい気持ちで、危ない方へ進んでしまうこともある
だから、本当の防御は、知識だけでは足りない
家族、会社の同期、先輩、上司が
「最近どう?」
「困ってない?」
「変な人に声かけられてない?」
と、常に何気ない一言を声掛けすること
それが最後の防波堤になることがある
誰かが自分を気にかけてくれている
その感覚があるかどうかで、踏みとどまれる
あの研修、記事から、もう7年が経つ
当時は、人材派遣会社の新入社員研修でそこまで扱うのか、と少し珍しく見られた
しかし近年になって、ようやく社会が動き出した
会社は、社員の人生すべてを守ることはできない
そこまで背負うことはできないが、伝えることはできる
危ない場所があると教えることはできる
声はかけることができる
困った時に戻ってこられる場所でいることはできる
大事な新入社員は、誰かの大切な子ども
抽象度を上げれば、日本の子供
「みんなの子供」なのだから

