2026.06.16

最高のコーチは教えない

楽天の新監督に吉井理人が就任するという報道が出た

近鉄バファローズ時代から好きな投手だった
母親の生家がある和歌山県有田市に近い土地の出身で箕島高校で活躍した選手
勝手に親近感があった

現役時代の吉井は気性の荒い投手という印象が強い
伝説の10・19の第一試合ではリリーフエースとして自分が試合を締めると思っていたところで、仰木監督が吉井に代えてエース阿波野に最後を締めさせた
その怒りからロッカールームで物を壊して暴れたという話は有名である
今の吉井からは想像しにくいが、もともとは相当、激しい性格だった

野茂英雄と仲が良くフォークを教えてもらった話もある
メジャーも経験した
ヤクルト時代にはノムさんの薫陶も受けた
選手としても指導者としても、濃い野球人生を歩んできた人である

その吉井がロッテの監督を降りて間もないタイミングで楽天の監督に就任するという
喜ばしいことだと思う
それだけ球界で指導者としての実力を認められているのだろう

最高のコーチは教えない

特に若手投手の育成力は自分のような経営者から見ても学ぶところが多い
吉井のコーチングの根幹には選手が主役という考え方がある
コーチは選手を支配する存在ではない
選手が自ら考え、自ら課題を見つけ、自ら修正していくための手助けをする存在であるという

マウンドは孤独な場所だ
最後に投げるのは選手本人である
ピンチの場面でコーチが横からフォームを直してくれるわけではない
最後に頼れるのは自分の中にいるもう一人の自分である

吉井は選手の中に専属コーチを育てることを目指しているという
これは本当に深い
最高のコーチは選手の中にコーチを作る
そして最終的には選手が必要な時だけヒントを探しに来る
図書館のような存在になる
この表現が素晴らしい

吉井は教えることそのものを否定しているわけではない
教える前に観察しろ
教える前に聞け
教える前に相手の中に入れ
これは会社でもまったく同じである

社員に対してこちらの経験則だけで指示を出すことがある
自分はこうやってきただから君もこうしろ
これがいちばん危ない
自分にできたことが相手にも同じようにできるとは限らない
こちらの言葉が相手の言葉として理解されているとも限らない

吉井はコーチの最大の失敗は自分の言葉で選手を混乱させることだと言っている

経営者も同じである
良かれと思って言った一言で社員の集中を壊すことがある
余計な助言で相手の持ち味を消すことがある
本人の強みを見ずに一般的な正解を押しつけることがある
これでは人は伸びない

自分も20年ほど前コーチングがメディアで取り上げられ始めた頃に時間もお金もかけて学んだ
人を動かすのではなく人が自分で動くように関わる
答えを与えるのではなく本人の中にある答えを引き出す
その考え方にはかなり影響を受けた

もちろんそれ以降の自分のマネジメントやコミュニケーションにもその学びは残っている
ただ完全にものにできているかと言われるとまったく自信がない

経営の現場ではつい答えを言ってしまう
その方が早いからだ
しかし早いことと本人の力になることは違う
こちらが答えを渡し続ける限り相手は考えなくなる
そして指示待ちになる

吉井理人を見ているともう一度コーチングを学び直したくなる
自分の会社にもまだ伸びる人がいる
自分の関わり方次第でもっと力を発揮できる人がいる
その人たちの中にもう一人の自分を育てること
そのために自分ももう少し図書館のような経営者になりたいと思う

最高のコーチは教えない

教えないためには
誰よりも観察し
誰よりも質問し
誰よりも学び続けなければいけない

これはなかなか厳しい言葉である
そして今の自分に必要な言葉でもある

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