2026.08.10

ベルリン・天使の詩

ベルリン・天使の詩』を最初に観たのは、21歳の頃
ちょうど学費が払えなくて大学を除籍になり、世の中は昭和天皇が崩御し自粛ムードに包まれていた時だったと思う

暗くて難しい映画だと思ったが、こういう映画を求めていた気がする
よく理解できなかったが、印象には残った

それから何度か観るたびに、少しずつ理解できるようになった
そして、この年齢になって、この映画が描こうとしていたことが理解できた

舞台は、まだ東西に分断されていたベルリン
街には天使たちがいる
子どもにはその姿が見えるが、大人には見えない

天使は人間の心の声を聞くことができる
孤独や不安、悲しみや絶望
人間のそばに寄り添うことはできるが、直接救うことはできない
ただ、見守るしかない

天使には永遠の命が与えられている
長い時間の中で、戦争や虐殺、分断を繰り返す人間の愚かさを見続けてきた
天使から見た世界はモノクロである
人間の愚かさに色はない、という表現なのかもしれない

永遠に生きられる
人間の心の中まで見える
それでも主人公の天使ダミエルは、人間になりたいと言い出す

人間になれば、傷つく
老いて、いつか死ぬ
人間の愚かさを誰よりも知っているはずなのに、それでも人間になることを選ぶ

人間になったダミエルの世界はカラーになる

頭の傷から血が流れる
寒さを感じる
温かいコーヒーを飲む
手を汚す
誰かに触れる
そして、恋をする

天使は人間の心の声を聞くことができるが、人間と同じ時間を生きることはできない
何もかも知っていながら、何も経験することができない
ダミエルが捨てたのは永遠の命というより、傍観者として生きることだった

人間は争い、傷つけ合い、同じ過ちを繰り返す
それでも、限られた時間の中で誰かを愛し、同じ時間を生きることができる
そのことが、永遠の命よりも価値のあるものに思えたのだろう

この映画は暗い映画ではなかった
人間として生きることを肯定した、とてもロマンチックな映画だった

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