2026.08.25

海面水温とファストファッション

世界の海面水温が観測史上最高を記録した

8月22日、北極圏と南極圏を除く世界の平均海面水温が21.10℃に達した
これまでの最高は2024年3月の21.09℃
わずか0.01℃の差だが、通常、世界の海面水温が最も高くなるのは南半球が秋を迎える3月から4月である
8月に最高記録を更新するのは異例だという

海面水温が上がると、海の中だけの問題では済まない
台風は海から大量の水蒸気とエネルギーを得て発達する
夜になっても海から熱が放出され、沿岸部の気温が下がりにくくなる
海水は温められると膨張し、海面上昇にもつながる
サンゴが白化し、魚は生息できる水温を求めて移動する
これまで獲れていた場所で、魚が獲れなくなる

海は、人間が排出した熱の90%以上を吸収してきた
我々が地上で感じている暑さは、地球にたまった熱の一部に過ぎない
海は、巨大なエアコンのように地球を冷やし続けてきた
その海が、観測史上最も熱くなった

同じタイミングでファッション通販大手のSHEINが香港市場へ上場するというニュースが報じられた
SHEINは、消費者の検索や購買データを分析し、売れそうな服を多品種少量生産する
反応が良ければ、すぐに追加生産する
従来のアパレル企業より在庫を抱えず、流行の商品を驚くほどのスピードと低価格で販売する
非常に合理的で、効率の良い仕組みである

2026年3月末の時点で、SHEINが取り扱う衣料品は200万型を超えていた
そして、1日に平均約4700型の新商品が投入されている

1日に4700型

その数字を聞くと、もはや従来のファッションではない
ファッションとは本来、自分を表現するものだった
何を選び、どう組み合わせ、どう着るか
そこには着る人の個性や価値観があった
しかし、毎日4700型もの新商品を見せられたら、じっくり選ぶ暇などない
昨日買った服は、今日にはもう古く見える

SHEINは、必要な分だけ生産することで売れ残りを減らしていると説明する
確かに、一つの商品を大量に作って廃棄するより合理的かもしれない
しかし、売れ残りを減らしても、安価な服の総量が増え続ければ環境負荷は減らない

2025年のSHEINの二酸化炭素排出量は、売上高で上回るZARAの運営会社インディテックスの約2倍だったという
服を作るには、原料と水とエネルギーが必要になる
工場から倉庫へ運び、倉庫から世界中の消費者へ届けるためにも、エネルギーを使う
高速回転のビジネスモデルなので、まだ着られる服がどんどん廃棄される
安価すぎて二次流通の価値も生まれにくい

服の生産や輸送によって排出された温室効果ガスは、地球に熱をため込む
その熱の大部分を、海が吸収してきた
もちろん、これはSHEIN一社だけの問題ではない
ファッション業界全体が、環境負荷の大きい産業だと言われてきた
その一方で、近年は多くの企業が環境負荷を減らすための取り組みを進めている

我々が、安く、新しく、すぐに届く服を求めたから、この業界が成長した
企業は、消費者が求めていると言う
消費者は、安いから買ったと言う
投資家は、さらに成長することを求める
その間で、海の熱が上昇を始めた

SHEINは上場によって大きな資金を得る
上場後は、これまで以上の成長を期待されるだろう
環境への配慮を掲げながら、昨年より多くの服を売り、昨年より多くの利益を出さなければならない
売れ残りを減らしながら、売る量を増やす
一着も捨てなければ、大量に作ってもサステナブルと言えるだろうか

海面水温の上昇とSHEINの上場
一見、関係のない二つのニュースだが、実は同じ線上にある
我々は、便利さと安さの代償を、文句を言わない場所へ押しつけてきた

低賃金で服を作る工場の人たち
まだ生まれていない次の世代
そして、何も言わない海

しかし、その海が熱を持ち、台風や豪雨や熱帯夜となって、私たちの暮らしを脅かす

ツケは絶対に回ってくる

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