1988年公開
ロバート・デ・ニーロとチャールズ・グローディンが主演、監督はマーティン・ブレスト
初めて観たのは21歳、以降、何回観たことか
デ・ニーロ演じるジャック・ウォルシュは元シカゴ市警の刑事
ある事件をきっかけに警察を辞め、妻と離婚し、今は賞金稼ぎをしている
そんなジャックが、マフィアの金を横領して慈善団体に寄付した会計士、ジョナサン・マデューカスをニューヨークからロサンゼルスまで連行する
飛行機で行けば簡単な仕事だったが、マデューカスが飛行機恐怖症(虚偽の)だったことから、列車やバス、車を乗り継ぐ長い旅が始まる
FBIとマフィア、さらには別の賞金稼ぎまで二人を追いかけてくる
設定だけ聞けばロードムービー的な犯罪アクション映画だが、『MIDNIGHT RUN』の魅力はそこではない
ジャックとマデューカスの掛け合いが良い
短気で口の悪いジャック
理屈っぽく、飄々としているマデューカス
最初はお互いに嫌いだった二人が、一緒に旅をするうちに少しずつ相手のことを知っていく
そして、いつの間にか奇妙な友情が生まれている
この映画には好きな場面がたくさんある
その一つが、ジャックが腕時計を気にする場面
元妻からもらった時計なのだが、もう壊れている
時計としての役目を果たしていないのに、ジャックは捨てない
ブレストは、ジャックに過去への未練を語らせない
壊れた時計を見せるだけだ
旅の途中、二人はシカゴに立ち寄る
そこでジャックは、離婚した妻と、長い間会っていなかった娘に再会する
21歳で初めてこの映画を観た時、この場面を特別な思いで観ていたわけではなかった
映画は変わらない
しかし、観る側の人生が変わると、同じ映画が違って見えることがある
マーティン・ブレストという監督は寡作である
キャリアの中で監督した長編映画はわずか数本
『ビバリーヒルズ・コップ』
『セント・オブ・ウーマン/夢の香り』
『ジョー・ブラックをよろしく』
等々
どれも好きな映画だ
ジャンルはそれぞれ違うが、ブレストの映画には共通しているものがある
人間を描いている
友情や家族、孤独や喪失を描く
しかし、湿っぽくしない
ユーモアがある
『ビバリーヒルズ・コップ』もそうだ
アクセル・フォーリーがデトロイトからビバリーヒルズへ向かうのは、幼馴染の友人を殺されたからだ
その友人との関係にも人種を越えた友情という背景がある
しかし、それを大袈裟なテーマにはしない
アクセルとビバリーヒルズの刑事たちも、最初は反発しながら、いつの間にか仲間になっている
笑って観ているうちに、人情の話になっている
ブレストは、感動を押し売りしない
悲しい場面だからといって、必要以上に悲しく撮らない
孤独な人間を描いても、可哀想な人にはしない
人間の弱さと同時に、人間の可笑しさを描く
その塩梅がちょうどいい
最近、マーティン・ブレストという名前を聞くことが少なくなった
最後に監督した『ジーリ』から、もう20年以上が経つ
でも、今観ても彼の映画は古くない
人生は映画のようにきれいにはいかない
失った時間が戻ってくるわけでもない
それでも誰かと出会って、少し笑って、また歩き出す
マーティン・ブレストの映画は、そんなことを大袈裟には言わない
だから好きなのだ

