2026.09.01

ブロンクス物語

1993年の映画『ブロンクス物語

ロバート・デ・ニーロの初監督作品で、自ら主人公カロジェロの父親ロレンツォを演じている

1960年代のニューヨーク、ブロンクス
ロレンツォはバスの運転手として働いている
毎日決まった時間に仕事へ行き、バスを運転して家に帰ってくる
裕福ではない
服装も生活も地味である

一方、街にはソニーというマフィアのボスがいる
いい服を着て、いい車に乗り、いつも周囲には人がいる
街を歩けばみんなが道を空ける

少年だったカロジェロの目には、父親よりソニーの方が圧倒的に格好良く見えた
やがてカロジェロはソニーに可愛がられ、二人の「父親」の間で成長していく

この映画が面白いのは、ソニーを単純な悪人として描いていないところである
ソニーはカロジェロを本当に可愛がっている
人の見方を教え、危険な仲間から遠ざけようともする
そして、自分と同じ人生を歩ませようとはしない
おそらくソニー自身が、自分の生き方の行き着く先を一番よく知っていたのだと思う

最近、昔悪かった人や、一度道を踏み外した人の更生をテーマにしてリアリティショーやコンテンツが人気になっている
そこには更生のストーリーがある一方で、人間が持つ悪やアウトローへの憧れもうまく利用されている

喧嘩が強い
昔は相当悪かった
刑務所に入っていた

そうした過去がキャラクターになり、人気が出て、有名になり、お金を稼ぐ
もちろん、過去に問題を起こした人がやり直す機会は必要だ
しかし、その後に再び一線を越えてしまう人もいる

以前、会社で導入している犯罪心理学の専門家が監修した適性検査を、自分も受けたことがある
結果は「リスク度の高い人材」だった
理由は「目的のためには手段を選ばない」という傾向が強いからだという
もちろん、リスク度が高いから犯罪者という意味ではない
むしろ経営者やハイパフォーマーにも多い傾向らしい

目的を達成したいという強い欲求
行動力
大胆さ
リスクを恐れない性格

それ自体に善悪はない

重要なのは、選ぶ手段が法令や社会的なルールの範囲内にあるかどうかだと思う
強い衝動や達成欲は、環境が変わっただけで消えるものではない
そのエネルギーが正しい方向に向けば、大きな成果を生むこともある

しかし、自分の中にある境界線を見失えば、同じエネルギーが再び問題を起こす方向へ向かうこともある
だから、更生とは一度立ち直ったところで完成するものではないと思う
過去の過ちを武勇伝にせず、更生後も被害者への謝意と配慮を忘れず、一線を越えずに生き続ける
そこまで含めて、本当の更生なのだと思う

『ブロンクス物語』のロレンツォは、それがわかっていた
毎日バスを運転しながら、街を見て、人を見て生きてきた

「毎朝家を出て働きに行く男のほうがマフィアよりも強いんだ」

派手な人間が最後にどうなるのか
悪いことをして得た金が何をもたらすのか
恐れられることと尊敬されることの違い

そんなことを、日々の暮らしの中から知っていた

だから息子に派手な人生を見せることはできなくても、自分が正しいと思う生き方だけは見せ続けた
そしてソニーもまた、自分の人生を通して同じことをカロジェロに伝えた
二人の父親は正反対の人生を歩いている
しかし二人とも、カロジェロには自分の人生を大切にしてほしいと思っていた

子どもの頃には、ソニーの方が格好良く見えるかもしれない
大人になると、毎朝仕事へ行き、家族を守り、一線を越えずに生き続けたロレンツォの格好良さがわかる

地味に真面目に生きる

誰にも注目されない、バズらない人生
でも、そんな生き方が誰かの人生を支えている
そして本当は、それを何十年も続けることの方が難しいし、尊い

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