2026.09.03

ザ・ポーグス

以前からアイルランドという国に惹かれている

長い間、隣国イギリスの支配に苦しみ、それでも自分たちの文化や言葉、音楽を守ってきた国

陽気で、酒が好きで、よく歌う
しかし、その明るさの奥には、哀しさがある

そんなアイルランドの国民性を、そのまま音楽にしたようなバンドがザ・ポーグス

ザ・ポーグスは、1982年にロンドンで結成された
アイルランドの伝統音楽にパンクを混ぜた、と説明されることが多い
バンジョーやアコーディオン、ティン・ホイッスルが鳴り、酒場で人々が肩を組んで歌うような音楽
演奏は陽気で、テンポも速い
しかし、歌われているのは、酒、貧困、移民、故郷、失恋、そして、うまくいかない人生である

中心人物のシェイン・マガウアンの声も美しいとは言い難い
しゃがれていて、酔っ払っているようで、時には何を歌っているのかわからない
歯は抜け、酒とドラッグに溺れ、破滅的な人生を送った
それでも、彼の歌には不思議な優しさがある

人生からこぼれ落ちた人
酒に逃げる人
故郷に帰れない人
夢を諦めきれない人

シェイン・マガウアンは、そんな人たちを見下さなかった
自分も同じ場所に立ち、一緒に酒を飲み、一緒に歌った

ザ・ポーグスの代表曲『Fairytale of New York』というクリスマスソング
そこで描かれているのは、幸せな恋人たちではない
ニューヨークへ渡り、成功を夢見た男女が、互いを罵りながら、かつての夢を思い出す
愛し合っているのか、憎み合っているのかもわからない
華やかなクリスマスの街で、人生の敗者のような二人が、それでも一緒にいる

美しいだけではない
むしろ、みっともない
人間くさい歌になっている

ザ・ポーグスは野毛の街に合う
狭い店から歌声が聞こえ、酔いどれたちの笑い声が路地に響く

野毛もまた、人生から少しはみ出した人を拒まない街である
酒を飲み、歌っている間だけ、年齢も肩書も過去も関係なくなる
楽しいのだが、どこか悲しい
その楽しさがいつまでも続かないことを、みんな知っているからだと思う

ザ・ポーグスの音楽に重なる
彼らは、ろくでもない人生を、音楽によって祝祭に変えた
人生は、きれいではない
それでも今夜は、酒を飲み、歌えばいい

ザ・ポーグスの音楽は人間への賛歌である

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