警視庁で警察官が不足しているという
2026年4月時点で、定員に対する警察官の充足率は93%
欠員は約3,000人にのぼり、全国の都道府県警察で最も低い水準になっている
全国の警察官採用試験の受験者数も、この15年間で約3分の1まで減少した
高校卒業後に、新卒で大手の警備会社へ就職した友人がいた
本当は警察官になりたかったらしい
入社後、配属されたのは、契約先の施設などを巡回する警備だった
もちろん本人は望むところ
「賊が入ったら、警察より先に捕まえたる!」
そう意気込んでいた
当時の自分たちの感覚は、警備会社へ入ることは、警備の現場で働くことだった
会社にどのような部署があり、どのような役割があるのか
インターネットもなかったので、よく分からなかった
その業界で想像できる仕事といえば、まず現場の最前線にいる人だった
警備会社なら警備員
鉄道会社なら駅員や運転士
ファッション業界なら販売員
だから、まず現場から始めることに、疑問を持たなかった
ところが、最近の新卒社員は、現場へ配属されると、
「いつ本社へ行けるんですか」
と聞いてくるらしい
ファッション業界も同じで
新卒で入社すれば、まず店舗配属
しかし、会社説明会の段階から、
「何年で本部職に就けますか」
という質問が出る
今は、入社する前から会社の組織や職種を調べることができる
仕事内容、給与、残業、離職率、社内の人間関係
仕事のやりがいだけでなく、つらいことや辞めた理由まで、検索すればいくらでも出てくる
情報が多いことは、悪いことではない
我々の時代は、何も知らなかったために、過酷な環境や圧力にも耐えてしまった
今の若者が、自分の将来を考え、キャリアを確認しようとするのは当然でもある
ただ、人間は、楽しいことよりも、つらいことに意識が向きやすい
10人が「やりがいがある」と書いていても、1人の「つらい」「辞めたい」という言葉が気になる
情報が増えれば、選択肢も広がるはずだった
ところが、失敗しないための情報を集めすぎて、経験する前から仕事を選択肢から外すようになった
我々の時代は、ある意味、知らぬが仏だった
よく分からないまま飛び込み、目の前の仕事を覚えた
その中で仕事の面白さを知り、自分の向き不向きも知った
いつ本社へ行けるのかを考える前に、まず現場で必要とされる人になる
警察も警備会社もファッションも、現場で何が起きているのかを知らなければ、本部で正しい判断はできないし、現場環境の改善やサポートもできない
販売の喜びや苦労、お客様の表情、売れない商品の理由を知らずに、マーケティングや商品企画を語ることは難しい
現場は、本部へ行くまで我慢する場所ではない
仕事を知り、人を知り、自分が何者なのかを知る場所である
知らなかったから飛び込めた世界がある
飛び込んだから初めて知ることのできた自分がいる
あの時、警備の現場から社会人生活をスタートさせた同級生は、今では子会社の社長となり、経営陣の一人になっている
仕事の本当の要諦は、検索してもAIに聞いても出てこない

