2026.09.30

パラダイムシフト

先日のブログでも触れたように、NHKの『ファミリーヒストリー』を観て、武井壮さんへの印象が大きく変わった

彼が育ってきた家庭環境や、そこから歩んできた道を知ったことで、それまでとは見え方が変わった
武井さんは変わっていない
変わったのは、自分の中にある彼への見方だ
スティーブン・R・コヴィーの『7つの習慣』に、パラダイムシフトという考え方が出てくる
物事を見る時の、自分にとって当たり前だった枠組みが変わること
それまでの判断や思い込みが揺らぎ、同じ現実を別の角度から捉えるようになる
今回の武井さんへの印象の変化もそれだ

そして、この考え方から、自分が思い浮かべる映画がある
『フィッシャー・キング』だ
1991年公開、テリー・ギリアム監督
ジェフ・ブリッジスとロビン・ウィリアムズが主演している

ジェフ・ブリッジス演じるジャックは、人気ラジオDJ
人を見下すような過激な発言で人気を得ていたが、自分の不用意な言葉をきっかけに銃乱射事件が起き、地位も名誉も失ってしまう
失意の中で過ごす彼が出会うのが、ロビン・ウィリアムズ演じるパリー
路上で暮らし、聖杯を探しているという、不思議な男だ
やがてジャックは、パリーが、あの事件で妻を失った人だと知る
自分の言葉の先に、一人の人間の、取り返しのつかない喪失があった
ジャックはパリーの力になろうとする
ただ、その気持ちには、自分の罪悪感を軽くしたいという思いも混じっている
誰かのために何かをする時、自分のためという気持ちがまったくないとは言い切れない
だから、ジャックの姿は他人事には見えない
彼の変化も、一直線ではない
それでも、パリーと関わるうちに、彼を見る目が変わっていく
自分が立ち直るために助けたい相手から、苦しんでいる大切な友人へ
自分は、そこにこの映画のパラダイムシフトがあると思う

映画の中で、パリーが語る王の物語がある
傷つき、聖杯を探し続けてきた王に、一人の愚者が水を差し出す
その器こそ、王が求めていた聖杯だった
水を差し出した者は、それが聖杯だと知っていたわけではない
ただ、目の前の人が喉を渇かせていたから、水を飲ませた
自分の価値を証明しようとする時には見えなかったものが、目の前の誰かを思うことで見えてくる
この小さな物語が、ジャックとパリーの関係に重なる

自分がこの映画を初めて観たのは25歳
以降、繰り返し観ている
特に忘れられないのが、ニューヨークのグランド・セントラル駅の場面だ
好きな女性を見つめるパリー
慌ただしく行き交っていた人々が、いつしかワルツを踊り始める
駅全体が、大きな舞踏会のようになる
誰もが目的地へ向かって急いでいる、いつもの駅
それが、恋をしている彼の目には、こんなにも美しい場所に映る
誰かを好きになるだけで、見慣れた街の景色まで変わることがある
この場面は、その感覚を表現している

人を知ることも同じで
街で見かける、少し変わった人
うまく働けない人
周囲とうまく馴染めない人
事情を知らなければ、簡単に判断してしまう
でも、その人が何を失い、何を恐れ、何を大切にしているのかを知れば、見え方は変わる
そして、自分が手を差し伸べるつもりで近づいた相手に、自分の方が助けられることもある

自分は、人との出会いによって人生が変わる映画が好きだ
成功することや、何かを手に入れることだけでは、人は救われない
誰かに出会い、それまで気づかなかったものが見えるようになる
そのことで、「もう一度頑張ってみよう」と思えることがある
もちろん、見方を変えても、すべてが解決するわけではない
失った人は戻らないし、傷ついた記憶も消えない
それでも、その先に誰かと笑える時間があるかもしれない
恋をすることも、誰かを大切にすることも、まだできるかもしれない

『フィッシャー・キング』を観ると、そう思える

自分の見方だけで、人や世界を決めつけてしまいそうになった時
この映画の、あの駅の場面を思い出す
忙しく行き交う人々の中にも、一人ひとりの人生がある
自分には見えていない、悲しみや恋がある

同じ景色が、少し違って見えてくる

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