サイバー攻撃による被害が相次いでいる
日本企業を狙った攻撃には、AIが悪用された可能性が高いという
便利な仕事の道具として、自分も日々その恩恵を受けているが、悪用する側にとっても便利なのだろう
人の役に立つものを、時間と労力をかけてつくる人がいる
一方で、その技術を使って盗み、壊す人がいる
悪貨は良貨を駆逐する
ネット社会の功罪のうち、罪の方が目立つようになってきたと感じる
フランスでは、スーパーの冷凍庫がサイバー攻撃を受け、通常はマイナス20度の設定温度が、150度に変更されていたという
庫内が実際に150度になったという意味ではないが、冷凍庫を冷凍庫として使えなくすることはできてしまう
冷凍庫にまで、サイバー攻撃が仕掛けられる
情報を盗まれるだけでなく、現実の暮らしを直接壊される怖さがある
これまでは、何でもネットにつなげば便利になると考えてきた
しかし、自分が外から操作できるということは、誰かにも操作される可能性があるということだ
暗号資産の管理には、コールドウォレットという考え方がある
資産を動かすための秘密鍵を、ネットから切り離して管理する
大切なものを守るために、あえてつながない
ネットにつながっているものには、外から侵入されるリスクがある
その前提で、便利さを考え直さなければならなくなった
もちろん、企業にも対策は必要だ
機器やソフトを更新し、認証を強化する
必要以上の情報や権限を持たせず、被害が出ても広がらないようにする
復旧できるよう、バックアップも備える
それでも、防御の費用も、確認の手間も、善良な企業や利用者が負い続ける
犯罪をする側のために、社会全体の負担が増えていく
チャップリンの『キッド』に、子どもが民家の窓ガラスを割り、そこへガラス屋のチャップリンが通りかかって、修理の仕事を得る場面がある
自分たちで困り事をつくり、その解決でお金を稼ぐ
いわゆるマッチポンプ
もちろん、セキュリティ会社がサイバー攻撃を仕掛けていると言いたいわけではない
攻撃を防ぎ、被害の復旧を支える人たちは、欠かせない存在だ
ただ、攻撃される側が戦々恐々とするほど、対策を売る側には商機が生まれる
被害への不安と、事業の成長が隣り合っている
専門的なことがわからなければ、勧められた対策がどこまで必要で、価格が妥当なのかも判断しにくい
怖いと言われれば、お金を払わざるを得なくなる
だからこそ、セキュリティへの支出も吟味する必要がある
何を守れて、何は守れないのか
どれだけ費用をかければ、どれだけ危険を減らせるのか
不安が大きい時ほど、売る側の説明を冷静に確かめたい
そして、企業や個人の自己防衛だけに任せるにも限界がある
便利にするためにつくった仕組みを、安心して使うために、さらにお金と時間を使う
その負担を利用者に求め続けるだけでは、いずれ便利さそのものが割に合わなくなる
この先、何でもネットにつなぐという流れには、ブレーキがかかるのではないか
自動運転もそうだ
運転を自動化する技術の安全性に加えて、外部からの侵入をどう防ぐか
通信が途絶えた時や、攻撃を受けた時にも、安全を保てるのか
普及を進めるほど、厳しく問われることになるだろう
これからは、何をつなぐかだけでなく、何をつながずに残すかが大切になる
通信が途絶えても動く
外から侵入されても、重要な機能までは触らせない
最後は、その場にいる人が止められる
そうした仕組みに、これまで以上の価値が生まれるのだと思う
AIが進化するほど、ネットから切り離すことの価値が上がる
便利さを追い求めた先で、不便さを買い戻すことになるとは
皮肉なものだ

