本格的に読書するようになって気づけば、ふたりの影響力のある作家、村上がいた
ひとりは、世界的な作家となった村上春樹
そしてもうひとりが、村上龍だった
その村上龍さんが、10月17日に亡くなった
74歳だった
訃報に触れて、自分にとってどういう存在だったのかを考えた
小説家であることは、もちろんだ
しかし、それだけでは収まらない
我々の世代にとって、村上龍はキュレーターだったのだと思う
音楽、映画、文学、セックス、政治、経済
世の中にある膨大なものの中から、自分の感覚で選び取り、その面白さや危うさを伝える
何を見るべきか
何を疑うべきか
今、どこで面白いことが起きているのか
村上龍の関心が向かう先には、何かありそうだった
今のように、何でも検索できない時代
知らない世界に出合うには、誰かの案内が必要だった
その案内役のひとりが、村上龍だった
『限りなく透明に近いブルー』や『コインロッカー・ベイビーズ』で、人間の欲望や暴力、孤独を描いた作家が、『カンブリア宮殿』では日本を代表する経営者たちと語り合う
幅が広い
世俗的なカルチャーから経済人まで
これほど広い領域を、自分の言葉で語れる作家は多くない
しかも、経営者を前にしても、作家だった
業績やビジネスモデル、経営手法だけでなく、その人がなぜそれを始め、何に突き動かされ、そこまで続けてきたのか
対話を通じて、経営者という人間が見えてくる
合理的に考えれば、やめた方がいい
それでも、やめられない
意地や執着、時には個人的な記憶が、仕事を動かしていることもある
そういう部分に、作家の問い効く
社会からはみ出した人間を描くことと、社会の中心で企業を動かす人間と語り合うこと
村上龍の中では、地続きだった
どちらにも、人間の欲望、孤独、恐れ、生きるための闘いがある
そして『13歳のハローワーク』では、これから社会へ出る子どもたちに、仕事の世界を見せた
人材の仕事をしている自分には、この仕事も印象深い
知らない仕事は、選択肢にすら入らない
こんな生き方もあると知ることで、初めて開く道がある
ここでも村上龍は、知らない世界への案内役だった
ふたりの村上は、それぞれ違う形で、我々の世界を広げた
村上龍は、小説の外でも、自分が面白いと思う人や文化や仕事を、こちらに差し出し続けた
年齢を重ねると、自分の知っているものだけで暮らせるようになる
好きな音楽を聴き、好きな映画を観て、慣れた考え方で世の中を見る
それは心地いいが、世界は少しずつ狭くなる
村上龍のような人がいると、そこに知らないものが入ってくる
我々の世代は、小説だけでなく、そういう刺激も受け取ってきたのだと思う
まだ知らない世界がある
そこには、会ってみるべき人間がいる
村上龍は、ずっとそう伝えていたように思う
心からお悔やみ申し上げます
今週もお疲れ様でした。
良い週末を!

